『陽山道』

1955|監督:キム・ギヨン|モノクロ

 

両班(ヤンバン)の息子が、純朴に愛し合うふたりを引き裂く。

キム・ギヨン監督作品は、まだ『下女』しか観ていないが、2回スクリーンで観ても飽きない傑作だった。たった1本の映画でその監督をベタ褒めしていいのか微妙かもしれないが、自分的にはかなりのヒット。白黒だがレトロ風なところが、かえって魅力的でもある。
ギヨン監督といえば「女シリーズ」が有名だが、第2作目である本作は、男性が主人公と言って良いだろう。内容的には、やはり無念さや格差などが感じられる。だが、男性には男性としての無念さがあり、権力で人の幸せを奪おうとする輩の存在など、女性目線とはまた違った視点や世界感があるように思った。死んだと思われていた男が実は生きていて…という「どんでん返し風」なところは何ともギヨン監督らしい気がして興味深く鑑賞したが、結局権力に逆らえば死ぬしかない無念さは、どうしようもない悲劇なのだった。また、当人同士だけでなく、娘や息子の幸せを願う親たちの姿にも胸打たれ、かなりオーバーな演技だが、わざとらしいとは言いがたい。


12/8追記:うっかりしていたが、『玄界灘は知っている』もギヨン監督作品だった!
2011年のTIFFで上映された時に観て、ビックリ仰天した力作。
客席が満席だったので、記憶に新しい(というか、ファン)の方も多いだろう。

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