雪の轍

2014|監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

 

雪の季節、カッパドキアで繰り広げられる家庭内冷戦や不条理。

日本や周辺国の映画を観ていると、家族だからこそ言えない、という場面に出くわすことがある。だが、それは家族には見せないような自分の世界が別にあったり理想があったりするからで、家族としか接点のない人にとっては、別の暮らしを想像することすら難しいに違いない。…となると、思い通りにならないイライラや日頃の鬱憤なんかは家族にぶつけるしかない。家族だからこそ言ってしまう本音。夫婦だからこその危機。連続する修羅場に心の奥底で唸りつつ、それでもこの映画に吸い寄せられてしまうのは、雪のトルコの美しさのお陰のような気がしている。主人公に突っかかる人々の言い分もわからなくはない。だが、客観的に見て主人公の男性は人格者だと思うし、全く悪くはない。いい人であるがゆえにみんなが甘えているようにすら思う。あなたの気持ち(考え)はわからない、でも私をわかって…家族とは言えそれは勝手すぎるのでは? 連続する不条理の中で、人格者は本来の人柄を保ち続けることができるのだろうか。

 

 

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