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北欧・東欧編第2弾です。
様々な国の映画が観たいと思っている私ですが、クロアチア映画を観るのは初めて。ハナ・ユシッチ監督はどんな風景を見せてくれるのでしょう。ロシア映画も観たことがあるような、ないような…アンナ・マティソン監督のインターナショナル・プレミアはタイトルを聞いただけで、すぐ観たいと思った作品です。
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『私に構わないで 』 クロアチアにもある、こんな家族のカタチ
人の集まりには気づかいが必要です。
よかれと思って「気を使わないで」と声をかけたりかけられたりすることがありますが、それは異様な緊張感を感じている人に対する言葉であり、複数の人と一緒に何かをする場合、うまくやっていこう、ぶつからないようにしよう、と全員が思っていないと、実際はなかなか上手くいかないことが多いのです。
でも、家族にはそういう気づかいは薄れます。わかってるだろうという思い込みとか甘えのため。それが許される当たり前が居心地の良さであったり、温かみだったりもするのだけど、真逆になる場合もあります。それがこの映画。
ギョッとしました。
困った人か嫌な人しかいない家族で、自分一人が我慢を強いられる。これは逃げ出すしかありません。
近年、女性が意思を持って自分の人生を摑み取ろうとする映画が増えています。男性社会で意思すら持っていない女の子もいたりして、女性の人権を考える機会が増えてきました。そういう背景もあり、きっとこの作品の主人公も自分の道を自分で掴みとるんだろうなと思っていたら…違いました。ネタバレしちゃいますが、逃げることを諦めた映画でした。
クロアチアの雰囲気や家族の状況、主人公のやるせなさもわかりましたが、どうしても腑に落ちません。一緒に映画を観た知人に解説してもらい、ラストは明るい方向に向かっているということまで教えてもらったのですが…残念ながら私には苦手なタイプの映画でした。
ただ、私は苦手ですがこれを表現したかった監督の意図はあると思います。他人と違って家族には遠慮がないことや、それでも家族だと思えることや、それがリアルなのだということ。世の中には自分の人生を切り開ける人間ばかりではなく、選択にも多様性はあるのだということ。現状に不満を持ちながらもその状況を受け入れ、生きている人が実は多いのではないかということ。ストーリーだけでなく、女優(演技)や風景や色合いや光の加減など全ての表現方法を駆使して映画を作り上げていることなどを考えさせられた作品でもありました。
『私に構わないで』記者会見“Quit Staring at My Plate”PC〈Competition〉
『天才バレエダンサーの皮肉な運命』 ロシアの華やかな世界とその裏側
映画をどうこういう前に、ロシア人が六本木会場を半数以上埋め尽くすことに驚きを隠せません。
私は海外の映画祭に行ったことがないので、外国の映画祭の雰囲気を味わうことができたような気分に浸ったり、あと、ロシア人のリアクションが大きかったので(確かにコメディではあるのだけど、爆笑が続く続く)、それにつられて笑ってしまったり。TIFFには10年通っていますが、こういうのは初めての経験でビックリしました。
作品も映画祭向きという感じで、ロシア芸術を魅せてくれる部分あり、芸術家の高飛車な性格やそれによる苦悩あり、見どころがたくさんある上、コメディ仕立てという…私はあまりロシア映画を観たことがないのですが、それにしてもロシアってこんなに柔軟な面白さを兼ね備えてたっけ?と、思うような作品でした。
ストーリーは「のだめカンタービレ」っぽい感じです。天才は自分のことを天才って信じてないとダメなんだけど、自分はともかく人へのダメ出しが多かったり口が悪くて、人望がないバレエダンサーの物語。
そういう人だとは百も承知なんだけど、ついていくタイプの女性もいたりして…特殊な世界の話ではあるのだけど、才能に惚れ抜く気持ちにあぁわかる!と思ったりしていました。命がけでプライドを守るとことかもね。
感想を書こうとするとどうしてもミーハーな感じになってしまうのですが、アート系の部分が、実はものすごくチカラが入っていて、後半のモダンダンスとかすごいですよ。もしかしたらロシアにはこういう映画がたくさんあるのかもしれませんが、私的にはこの映画、記録映画としての価値もあるんじゃないかと思うくらいです。
しかも、主演男優は「ダンサー」ではないのですよね。ものすごい努力をされたと思うのですが…俳優に演技以上の、バレエを求めているところや、それができてしまっているところが本当にすごくて、これは本当に、もう一回観たい作品です。