2016|監督:チョン・ヒョンソク
人生に無駄な時間はない
都会でトラブルに巻き込まれた演出家の男が、借金取りから逃れるために旅行を装って地方に行く…そこから始まる話ってホン・サンスっぽいダメ男の話だよねー…と思っていたら、全然違った! リアルでも金銭トラブルで苦労した監督が低予算で作った作品、とのことなのだが(俳優にギャラを払えないので主演は自分)、ストーリーがしっかりしていて素晴らしいし、鑑賞後の気分も良い作品である。監督はミュージカルのご経験も長いそうで納得。 ファルハディ監督の『セールスマン』もそうだけど、このところ、演劇をやっている人が(他人を)演じながら自分を見つめる作品が増えている。この映画は演出家が主人公なので、映画の後半に自分の経験を演劇にしていたシーンが映ったのだが、これが良かった。くだらない、バカバカしいとまで思える経験がちゃんと後で役に立っているなんて! 何事も経験。生きていることに無駄はないんじゃないかな、と思える。チョン・ヒョンソク監督、頑張って!次回作も是非、日本で上映してください。
〈第10回したまちコメディ映画祭 上映作品〉
素朴な感じの歌(버스커버스커 여수밤바다/ボスカーボスカー/麗水の夜)もいい。