大きな感動があるわけではないが、私はこの手の映画が意外と好きだ。
当たり前のような日常だけど、毎日誰もが皆
悩み、苦しんでいる。
いや、むしろ悩みや苦しみのない人などいないはずだ。
日々の小さな悩みをその日その日で何とかケリをつけて
その場その時に最も良いと判断したことの積み重ねが
「現在」だと言える。
そうやって積み重ねてきた「現在」も
ふと立ち止まって振り返ると
「本当に最も良い判断だったのか?」と
疑問に思ったりすることがある。
特に30を超えてからは
「もっと他の道もあったのでは?」と苦しくなったりする。
そんな時、こういう映画に出会えると救われる。
ちゃんとした方がいい、しっかりしていた方がいい…
でもそうなれなかった自分。
そんな自分をこれ以上責めなくてもいいと思うからだ。
この世界はしっかりした人ばかりではないよ。
日々の小さな悩みやいさかいを、
のらりくらりとかわしながら
何とかやっていっている人もいるんだよ。
自分のやっていることは棚に上げて、
自分の苦しみばかりを大げさに嘆く登場人物たち…。
微妙に連鎖する三角関係。
特に コ・ヒョンジョンの演じた、
力の入っていない、しなやかな女性が印象的だ。
映画の中に時々「ドリ」という白い犬が登場するが、
うまい演出である。
実はものすごく状況が緊迫しているのに、
キム・スンウとコ・ヒョンジョンが
海辺で犬と遊ぶシーンがある。
あのシーンのキム・スンウの楽しそうな笑顔ったら!
(場内静かに爆笑)
人間ってホントに面白い。
最後、コ・ヒョンジョンが別れを告げ、
車で海辺を走ると砂にはまって身動きが取れなくなる。
そこへ二人の男性が現れ、車を押してくれて、車が動き出す。
このシーンも意図的に作られたものなんだろうなぁ!
…作品を象徴しているかのようだ。
二人の男性の出現に、
またしても三角関係の連鎖か?!と思ったけど、
車が走り出した事で、展開が変わったことに気づいた。
身動きがとれなくなっても誰かが助けてくれることもある。
砂にはまっても 抜け出せる時が必ず来る。
それが人生かも。
日々の悩みや苦しみはやっぱりあるだろう。
でも、そんな中でも、
たった一つの小さな問題が解決しただけで、
人は笑えるのだ。
コ・ヒョンジョンのすがすがしい笑顔が忘れられない。
2006|ホン・サンス
※2008.1.2 旧ブログ『韓国映画と私』より転載