2014|監督:ユン・ジェギョン
ふたつの戦争を体験した男の人生を描いた力作。
誰かの幸せは、誰かの犠牲のもとに成り立っている…そんな風に思う。この映画でも、妹を死なせてしまったかもしれないという罪悪感に苦しめられながら、家長として全力で家族を支えた誠実な男の生涯が描かれており、胸が痛む。個人の夢や希望は叶わなかったにも関わらず、亡くなったであろう父に認めて欲しくて話しかけるシーンでは涙が止まらなかった。それにしても韓国人もドイツで働いていた人がいたことを初めて知り、驚いた。戦地で戦う兵士だけでなく、別の形で国に貢献していた人もたくさんいたようだ。まだまだ知らないことがたくさんあるのだなと改めて知る。
また、この映画は最後で自分の執着を手放すシーンがとても印象的だ。つらく酷い経験をカタチにするまでには時間がかかる。時間はかかったかもしれないが、執着を手放したことで、後の世代の幸せや平和を喜ぶような心の広さが感じられる。そんな表現をした制作者たちの成熟した人間性にもまた、胸打たれる。
(2015新大久保映画祭)