哀しき獣

2010|監督:ナ・ホンジン

 

俺の女に手を出すな。

ノワールは嫌いではないが、心が元気じゃない時に観るのはつらい。今は無理…という時は観ないようにしているので見逃すことも少なくないのだけど、何を隠そう私はキム・ユンソクの隠れファンなので(?隠れる意味ないか…)、ユンソク氏が出てる映画だと結局は観てしまいますです★
個人的には『チェイサー』より好みの映画だった。妻が家を出て行き、返せない借金の返済に苦しむ朝鮮族をハ・ジョンウが熱演。序盤の目のギラギラ感、妻を思い出す時の遠い目、痛みに苦しむ時の子供のような表情…さすがです。ほぼ希望がないにもかかわらず、何故こんなに逃げ通せるんだろう、生きることに執着するんだろう…と思いながら観ていたのだが、彼の頭を時々よぎる妻の存在が、彼を強く、逞しく、腹の据わった人間に仕立てたのかもしれないと気づいた。ノアールアクションでは男たちは獣にしか見えないが、口に出すことはない女への愛をポイントに観ると、少し感覚が変わってくる。一生の内で命をかけても惜しくないほど愛されたら、女は幸せだろうな…。だけど、男が一番男らしい姿は実は女には見えない世界なのかもしれず、切ない。

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