【EUFD2022 まとめ】EUフィルムデーズ2022 / オンライン

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 オンライン配信期間:7/8(金)〜 7/31(日)


EUフィルムデーズは欧州連合(EU)加盟国の在日大使館・文化機関が提供する作品を一堂に上映する映画祭。劇場ではなかなかお目にかかれない国の作品の上映もあったりして、毎年楽しみにしている映画祭のひとつである。

だが、今年は家庭の事情もあり、国立映画アーカイブまで足を運べそうにない…。諦めきれずに項垂れていたところ、なんと一部の作品をオンラインで配信してくださるとのこと!しかも、オンライン限定作品があるらしい!なんと11作品がオンライン配信されている!超太っ腹!

コロナ禍でのオンライン上映は私にとって不幸中の幸いであり、しっかり堪能させていただいたので、感想を記録しておきたい。


総評

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素晴らしいラインナップだった。

近年は動画配信サービスも続々と増えているし、選びきれないくらいたくさんの映画がひしめいている。アート系が好きな人にとっては探し出すのが大変だったり、新しい映画も観たい…という欲望にも駆られるのだが、かなり努力しないとそういった機会に巡り会えなかったり チャンスを逃す。

そんな中、オンラインでこれだけレヴェルの高い作品群に出会えるなんて、幸運としか言いようがないと思った。期待以上に、ガッツリ映画祭に参加した気持ちになった。

いつもは悩んだ末に鑑賞を諦める、「日本語字幕なし」作品にも今年は挑んでみることに。
基本英語字幕が難しいレヴェルの私でも、ユルく理解しながら、楽しむことができた。(少なくとも、観なきゃ良かったとは思わない)

内容的にも、世界の動向や目線に触れることができ、大満足。
人生の見つめ直し、マイノリティとその周囲、人間関係など、深重なテーマが多かったが、個人的には映画祭の感覚に酔いしれた。こういう作品に飢えていたんだなと実感する。

世界の国々の映画を上映してくれるのは限られた映画祭だけなので、広範囲を網羅するEUフィルムデーズは私にとって貴重な映画祭である。
今後とも、応援していきたい。

劇場&オンライン配信作品

 〜好きな順に感想を載せていきます〜

リカルド・レイスの死の年

古典ぽくも新しいモノクロ映画。これはオンライン鑑賞ではもったいない、ちゃんとスクリーンで観たい感じの作品である。だが、劇場に足を運ぶのが難しい者にとっては、神配信的作品!サラマーゴの小説も読んでみたい。

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神に仕える者たち

今の日本も宗教と政治の問題でキリキリしているだけに、深刻にガン見した。必ずしもモノクロ=映像美って訳じゃないのだろうけれど、近年あえてモノクロで撮ってる作品は映像美を意識したものが多いように思う。本作も然り。
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ピサの約束

人間関係で一番難しいのは家族だと思う。思春期に兄弟が離れ離れになった場合、互いの状況や考え方が変化するから余計に難しいだろう。”でも何を取るのか” がシビアだし 考えさせられた。
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サンレモ

認知症の大変さとか壮絶さとか、他の視点で描こうとする監督もいるかもしれないが、この世界感、空気感に、私は好感を持った。本人的には気に入らないことがあるかもなのだけど…
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参考:『イカした人生』
第12回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル 観客賞
EUFDではオンライン配信はありませんでしたが、劇場(国立映画アーカイブ等)で 上映されました

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オーナーズ

議論モノってめっちゃイライラするんだけど、私は結構好き。どう着地するのかがとても興味深いからだ。リアルでもこういう状況って困惑するだけに、めっちゃ参考にしたいと思ってしまう。
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ホーホヴァルト村のマリオ

マリオは事件が起こる前からぶっ飛んだ感じの青年なので、彼を全面的に理解したり同情するのは難しいのだが、ぶっ飛び過ぎだとしても後半の心情はわかる気がした。どこにも救いがない感じにリアリティを感じる。
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アントニオとレオ

共通の土地で年齢や性別の異なるふたりの人生が交差する、っていう展開は悪くない。でも、他国に希望を持つしかなくて結局”移民”を選んだり、頼れるのは同郷の人間...っていう感覚も昔からあるある。状況って変わらないものね…
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オンライン限定作品

 〜好きな順に感想を載せていきます〜

Lola vers la mer(海に向かうローラ)

自分がミドルエイジのせいかもしれないが、ローラとお父さん、両者の気持ちがすごく理解できる映画だった。大抵はどちらかに偏るものなので、どちらもっていうところが自分的にかなりツボった。また、インナーチャイルドの存在も、心に残る。

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Oskar & Lilli(オスカーとリリ)

エネルギーを失ってしまった母の気持ちが”理解できる”と思ってしまった。夫と生き別れた苦しみもあっただろうし、子供は自分が育てるより裕福な人に育ててもらった方が…と思う気持ちもあったのでは。だけど、とにかく子供の逞しさに救われる。

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La vita facile (Easy Living)  英語字幕

社会的な問題とか人生、哲学、みたいな映画を連続して観ていたので、こういう空気感や音楽の映画に出会うとめっちゃホッとする。イタリア語、フランス語、英語が飛び交い、英語で喋ってるときはもちろん英語字幕は出ないので、一瞬挫けそうにもなったが、わかんなくてもいっかと思いながら流すように観ていたら何となく楽しめた。それでいいのかも。

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Aatos ja Amine (Gods of Molenbeek) 英語字幕

この作品も英語字幕しか出ないので、子供の言葉とはいえ、結構肝心な場面がわからなかったりしたのだが、やはり何となく状況を推察していくような感じで観た。どこの国も、どんな宗教でも、子供は可愛いし、無邪気さは一緒だ。

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終わりに

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世界的なドンパチや経済状況の悪化、移民、マイノリティ、宗教…。
これまで他国の問題は他国の話だったし、こういう人もいるのかとか こういう状況は大変だとか、映画を観て自分ごとのように考えつつも リアルとはかけ離れてることがあったりしたが、今や映画はリアルに近づいている。

映画はエンタメとはいえ、私にとっては世界を知る窓であり、自分を客観的に見ることができる顕微鏡のようなものだ。

私は数年前まで「映画は映画館で観るべき」などとと言い放っていたが、それが叶わなくなる状況になった。
「〜べき」なんて言うもんじゃない。「必ず」とか「絶対」という言葉の不確かさよ…
だからこそ、色々な国の色々な映画を観ながら、こころと頭を動かしていたい。
スクリーン鑑賞が少なくなった今こそ、映画で何を感じ、学び、活かせるのかを、もっと考えていきたいのだ。

そんなことを考える機会を与えてくださった ”EUフィルムデーズ” に 感謝します。
20周年、おめでとうございます!





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