2021年の映画観賞をダイジェストで振り返ります
2021年の映画鑑賞にまつわるあれこれをざっくりと
2021年と言えば、コロナ禍とオリンピック開催。’20年に引き続き、コロナ感染の不安から外出することも映画館に行くことにも、まだ躊躇がある。その一方、配信で旧作も観られるようになり、自宅でのVOD鑑賞が増えた。映画館でのスクリーン鑑賞が何より大好きな私は映画館を応援したいと思っていたが、アップリンクやユジクといった馴染みのある映画館での問題が明るみに出て、映画業界への不審が高まった。また、東京国際映画祭元作品選定ディレクターの矢田部吉彦さんの退任により、映画祭への不審も高まった。(この辺りの件についてはまた別の機会に…)映画館や映画祭にお金を落とさなくなるであろうことは春先から予想されたため、今年の「趣味費」の使い道を考慮した結果、ブログ運営にお金を使ってみようと思い立ち、休眠していたブログを復活させ、映画感想を綴ることにした。昨年より映画をたくさん観たような気がする。しかし、まだ未鑑の作品も山のようにあることを思い知らされた一年だった。
鑑賞傾向の変化
2021年は邦画豊作の年と言われている。私はあまり邦画は観ない方なのだけど、海外の映画祭での受賞を知ると、重い腰を上げて観てみようかなという気持ちになる。濱口竜介監督が騒がれていることは以前から知っていたが、『寝ても覚めても』に出演している俳優が苦手な為(辛辣ですみません)、特にいいや…と思っていた。だが、今年の『ドライブ・マイ・カー』は観なくてはと思った。(でも未鑑) そうこうするうちに、『偶然と想像』も公開されることになり、さすがにこれは観るしかないでしょと思った。騒がれるだけのことはある。思い通りに生きられない若者の心の傷を描いたこれまでの邦画とは視点が全く違う。『ドライブ・マイ・カー』も観ておくべきだった...。(観る気満々だったのにタイミングを逃してしまったのだ★)来年は、何とかして観たいものである。
映画ベスト10
ブログをお休みしている間Twitterをしていて、年末にその年の映画ベスト10 を選ぶのが恒例となっている。フォロイーの方々がどんな映画を選ぶのかが楽しみだし、興行的なベストではなく本当に人気があった映画がわかるので、毎年いろんな方のベスト10 を見せていただき、参考にしている。もちろん私も載せるのだけど、そこで毎年迷うことがある。
・旧作(自分的に今年初鑑の作品)を入れるか
・劇場公開されていない作品を入れるか
・「映画として質が高い作品」と「個人的に好きな映画」は別モノ
他にもアニメを入れるかとか、邦画と洋画を混ぜる混ぜないかなどで迷う人もいるようで、この辺の考えは個人の映画の向き合い方によると思われるし、この分類の仕方だけでも、個性が感じられるような気がする。ちなみに私は旧作は入れない。また、アニメと邦画はたまにしか観ないので、良い作品があれば選考対象に入れる。また、映画としてのレべルがどうこうではなく、単純に「好き」かどうか、という感覚を大事にしている。(芸術的に優れている、たくさんの人が観るべきであるという映画については、映画業界の方に選定をお任せしたい)
2021年映画ベスト10〈劇場公開版〉
Twitterでは不特定多数の人の目に触れる可能性が高いため、今年日本で劇場公開された作品でのベスト10を選んだ。
#2021年映画ベスト10〈劇場公開版〉
— 703 (@cinemarble703) December 31, 2021
1.プロミシング・ヤング・ウーマン 🇺🇸
2.偶然と想像 🇯🇵
3.1秒先の彼女 🇹🇼
4.大地と白い雲 🇨🇳
5.夏時間 🇰🇷
6.ジャッリカットゥ 牛の怒り 🇮🇳
7.逃げた女 🇰🇷
8.ファーザー 🇬🇧 🇫🇷
9.モロッコ 彼女たちの朝 🇲🇦 🇫🇷 🇧🇪
10.アナザーラウンド 🇩🇰 🇸🇪 🇳🇱
基本、大きな差がないくらいどれも好きな映画である。
1位はダントツで『プロミシング・ヤング・ウーマン』だけど!
2021年映画ベスト10〈総合版〉
劇場公開版のベスト10に嘘偽りはないけれど(笑)、さらに配信や映画祭上映のみで 一般公開としてスクリーンで観ることのできなかった作品も加えた「総合版」も、今年は選んでみた。(チョロっと選考理由も入れてみます)
【10位】モロッコ 彼女たちの朝(モロッコ )
手触りというか味わいというか、画面を通して伝わってくるやわらかい光のようなあたたかさ。強さとたくましさも感じられる作品ながら、このやわらかな感覚がとても女性らしさを感じさせる。ひとりで何とかしようとする時代、手を差し伸べてくれるのは同性なのかもしれないという予感と、助けられたとしても自分の道は自分で決めるというシビアな現実のバランスが何とも素晴らしかった。
【9位】ジャッリカットゥ 牛の怒り(インド)
丑年の今年、いくつか牛が登場する映画を観た。中でも、イキイキとした生命力が感じられた異色作がジャッリカットゥ。牛の脱走をきっかけに人々の狂気が高まっていくクレイジーさが生々しく、人間くささの染み込み方が半端じゃない。人間は素晴らしい生き物だけど、目を覆うような裏側もあることを思い知らされ、衝撃を受けた。怖い、でも観たい。かなりショッキングな作品。
【8位】夏時間(韓国)
淡いあたたかさを感じるパステルカラーのような色彩で描かれる、一般ピープル(←死語?)の日常に、めちゃくちゃ感情移入しまくった。自分で選べるわけではない家族とは、いつまでもいつまでもつながりがあるから、困ったときは助かるけど、嫌な思いをすることもある。それをゆっくり見つめることのできる「夏休み」という時間は、特別というか格別な時間だったんだなぁと改めて知る。自分自身の夏休みもふりかえるきっかけになった。純粋な弟がかわいい。
【7位】大地と白い雲(中国)
男と女の感覚の違いを考えさせられる傑作。変化を求める男の気持ちもよくわかるし、現状維持を大事にしたい女の気持ちもわかりすぎる。つらいのは、どちらかが浮気したとかではなく、お互いに愛し合っているところだ。お互いの良いところがわかっているし、受け入れているからこそ、相手の気持ちを否定できない。第三者的にはそれが切なくてどうにもならないことが残念でたまらない。心に残像が残るような作品。
【6位】1秒先の彼女(台湾)
チェン・ユーシュン監督の感覚って面白いなぁと以前から思っていたので、めちゃめちゃ期待値が高かったんだけど、全く外れることなく、より大好きになった!ヒロインの状況から描かれているので女の子が主役かなと思うけれど、長い長い片思いをする男子のラブストーリーでもある。嫌いな人だったら単なるストーカーに成り下がる可能性もあると思うのだけど、愛されて満たされていく女の子の幸せに胸がいっぱいになる。
#1秒先の彼女
— 703 (@cinemarble703) June 16, 2021
人生って記憶を積み重ねているようだけど、実は“忘れている記憶“もある。一方で、忘れようとしても忘れられない記憶も存在する…。時間の感覚が異なるふたりのシュールなラヴストーリー。探しものを見つけた歓喜に共感✨&涙😭&キュン💕(6.25公開)@ichikano_movie @BittersEnd_inc 🙏 https://t.co/NacuxwBY82 pic.twitter.com/UERQvtMJbG
【5位】瀑布(台湾)
まさしく今年を象徴するようなコロナ映画。だが、重要なのは「コロナ」なのではない。コロナをきっかけに、これまで気づかなかったことが溢れ出た、というところが、まさしく今年ならでは、だと思うのだ。日本では、オリンピック組織委然り、アップリンク問題然り。日本以外でも、コロナをきっかけに表面化した問題って色々あるんだろうな…社会的にも、個人的にも。この作品は家族にフォーカスを当てた作品だが、光の見えるラストに救われた。
【4位】私の名はパウリ・マレー(アメリカ)
私も知らなかったのだが、名の知られていない偉人って まだまだいらっしゃるのだろうなぁとしみじみした。様々な「生きにくさ」と真っ向から向き合う女性って本当にすごいし、心から尊敬する。これ以上傷つかないように、もう声を上げるのはやめようと思う人がほとんどだと思う。だが、彼女は頭も良く、人柄も素晴らしく、行動力もあった。また、自分に正直でもあり、セクシャリティについても目を逸らさなかった。真摯に生きる姿勢はたくさんの人に勇気と希望を与えたと思う。
【3位】偶然と想像(日本)
濱口竜介監督作品に初めて触れ、こんな日本人もいたのかと驚いた。邦画が嫌いという訳ではないが、邦画と洋画はサッカーと野球くらい、自分の中ではジャンルが別モノだった。だが、その固定概念が覆された気がする。2021年は強い女の映画が多かった。日本ではまだ女の立場は弱い。なのに、女は主張し、実力を見せつけ、結果を出すのも当然のような映画が増えている。そこで私のバランス感覚がちょっと崩れた。男は必ず逆襲するだろう…。濱口監督はいい意味で、それを感じられた最初の監督である。
【2位】最善の人生 (韓国)
2021年は私自身、敗北を感じるような出来事がいくつも起こった。原因を考えたり自分を責めたりして泣いた。だが、思う。間違っていたかもしれないけれど、その場その時に考え抜いた一番良い方法で、自分なりに人生を切り開いてきたのだ、と。映画と全く同じ状況ではないが、自身の人生を重ねてこの作品を観た。これが正しいとは言わない。自分と同じだとも言わない。でも、共感した。彼女の人生は最悪の展開を迎えるかもしれないが、彼女にとってあれが最善だったことは、否定しない。
【1位】プロミシング・ヤング・ウーマン(アメリカ)
2021年は女の底力を見せつける作品が多かったように思う。でも、それは映画やドラマの世界であり、日本の日常で男がギャフンと言ってるところを見たことがない。*1 まだまだ女は押し込められている。深く深く、男がどんなに手を伸ばしても届かないような場所に潜む女は、表面的には見えない所で、実はうごめいている。そして計画する…。死ぬことよりも大事なことがあるという、想い、覚悟、潔さ。誰の手も借りずに自己完結するところも今っぽくてシビれる。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』
— 703 (@cinemarble703) July 28, 2021
紹介やあらすじでざっくり知るのでは全然意味がなく、ちゃんと映画を観ないと意味がない作品だ!と思った。いつかは動画配信される日が来るだろう。でも、この作品は映画館で観た方が、よりテーマが沁みると思う。映画館で観ることができて良かった〜😭
2020|🇺🇸
まとめ
今年は コロナ、権力を振りかざしても意味がなくなってきたこと、女性、この辺りが鍵となる一年だったように思う。
私は古い人間なので、男と女に感覚の違いがあると思っていて、そのままの書き方をしているが、今はジェンダーレスな考え方がニューノーマルになってきており、必ずしも私の考えが正しいとは言えないだろう。
ジェンダーに限らず色んな考え方がある中で、誰も傷つけたくないとか 人に嫌われたくないなどと考え過ぎると、結局何も言えないことにもなりかねず、今の感覚で考えたり書いたりしてもいいんじゃないかと思うようになった。
リアル社会を生きながら、考え方が変わることがある。
ただそれを不安や嫌悪で受け止めるだけでなく、映画を観ながら考えたり、リアルで実践したりして、自分の人生をより豊かなものにしていきたい。
*1:性別関係なく、今時ギャフンという人はいないと思うけど…