2008|ブリランテ・メンドーサ
嘘と真実と仲間と裏切り
揺れまくる画面から伝わるのは「生命力」だ。羊のように従順に、言われたことを言われたままにこなす労働者ではない。何も考えていなかったり、ただ黙って我慢しているだけの低所得者ではない。素晴らしくもなく、正しくもないけれど、とにかく使えるエネルギーの全てを出して生きる人々。呆気に取られるような図々しさと図太さに、溢れる生命力が揺れ動く画面から激しく伝わってくる。
映画が上映される前に会場で「これから映画を上映いたします。『どん底』をお楽しみください」というようなアナウンスが流れたのだけど、果たして楽しめるのだろうか?と思ったりした。だって「どん底」なんだよ? 楽しんでいいの?
暗闇を照らす懐中電灯も、あかりとは呼べないような頼りなさなのに、警察から逃げる彼らの足音は力強い。入れ歯を亡くすのも、死ぬのも一瞬。泣きながら、人は生きる。ひしめき合う人々の中に、男も女も愛も裏切りもエゴもごちゃ混ぜになる。…どん底だけど、楽しんで良かったのかと、ふと思った。