立ち去った女

2016|監督:ラブ・ディアス

心の闇に向き合う

私の人生を返せ!と言ったところで、時間は戻らない。悔しくてたまらず、いつ復習してやろうかとずっと様子を伺っている女。だが彼女は元々小学校教師でもあり、優しい心の持ち主でもある。同一人物なのに、天使のようだったり悪魔のようだったり…そんな姿がモノクロの画面に美しく映える。
30年間も刑務所で過ごした彼女の無実がある日突然認められ、出所…という強烈なシチュエーションに、最初から圧倒される。出所後に出会った人々も濃い人ばかり。また、印象的なのは、ゲイ&その周囲の人の描き方だ。近年、LGBTはちょっとしたブームのように思う。(それらが一緒くたに語られるのもどうかと思いつつ書いちゃってますが…)涙なしには観られないような感動作も中にはあるけれど、「受け入れない人が悪い」という感じがどうも一方的に思え、腑に落ちないような映画も実はあった。差別、偏見に苦しむ気持ちは理解できる。だが、どういうところが受け入れられないのかについてはあまり触れられておらず、理解してくれない人が敵みたいになっているのが何となく気になっていた。いきなり「敵」なのではなく、理解しようと歩み寄る努力をしている中間層もいるわけで…とか思っていたらこの映画ではちゃんとそういう層の人も出てきて、でも無理、っていう人が登場するので、おおぉ、と思った。ゲイだって長所ばかりではないし…。そういう細かい表現が絶賛したい理由のひとつ。映像も物語も素晴らしい。3時間48分。傑作です。