2011|監督:ペマ・ツェテン|チベット
誰かに盗られるくらいなら あなたを殺していいですか
チベット人監督の映画を初めて観て、胸の高鳴りが抑えきれなかった。私はこれまでもチベットの文化・美術には興味を持っていたのだけれど、これがチベットだ!と「らしさ」を打ち出したものばかり、目にしていたからである。もちろん外国人として、それを知るべきだと思うし、知りたい気持ちもある。だが、こんな風にチベット見て!(という思惑)に、ただ頷くだけでなく、本当に知りたいのは、リアルなチベットの暮らし ・生活なのだということに、改めて気づいた。この映画は飾られたチベットではなく、素のままのチベットのように思える。アスファルトで包み込まれていない道の上には大きな水たまりがいくつもあり、車もヤクも人も通る。町もあり、野山もある。天然の音声が耳をつんざくように響く終盤は圧巻だ。生きていること、自分の想いに執着することは、胸が締め付けられるような苦痛を伴うが、第三者の目から見ると「幸福」な様にも思える。