まぼろし

2000|監督:フランソワ・オゾン

楽しいはずのバカンス中に忽然と夫が消える。

同じ時、同じ場所にいても、それを捉える人の心には実は差がある…何度もそういう経験をしているけれど、同じ体験を共有したいという願いの強いO型の私には、気持ちの通い合わなかった人にも「でも本当はわかってるよね?」と言いたかったりする。でも、そうじゃないんだな、多分。それぞれの捉え方や思いの違いについて、深く考えさせられる。優しく全てを受け入れてくれていても、それは当たり前ではなく、我慢の結果だったとしたら。…かなりショッキングだが、絶対にあり得ないとは言えないだろう。この映画で一番スゴいのは、義理の母との会話シーンだ。「母親よ」「私は妻です」という女のプライドには本当にゾクゾクした。この人を一番知っているのは私と思いたい。でも、本当に、彼を知っていると言えるのだろうか。一緒に暮らしたとはいえ、他人を深く知ることはできるのだろうか。彼女は本当に夫を愛していたと言えるのかも含め、色々なことがわからなくなっていく。本当のことは、誰も知らない。

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