アスファルト

2015|監督:サミュエル・ベンシェトリ

誰かが誰かを助けてくれる。ささやかに、当たり前に。

個性的であることは悪いことではないとされながらも、日本は個性的な人が生きづらい社会だと私は思う。みんなと同じ、が良しとされ、受け入れられ、嫌われない。古くから続く島社会では、個性を貫くことは難しい。自分を出せない毎日だからこそ、マイノリティを感じる映画に自分を重ねてしまうのは、致し方ないような気がしている。思い描いた自分になれなかった大人、という面では、私も同じ。
失敗を人のせいにしたり、不平不満をぶちまけている時は、まだいい。元気がある。でも、だんだんと気づいてしまうのだ。思うようにならなかったのは、自分のせいなのだと。齢をとってしまったし、どうしたらいいかわからないながら、ただただ生きるしかない。そのことを肯定できるか。最近はよくそんなことを考える。答えのない、不毛な状況に救いの手を差し伸べてくれるのは、フランス映画。自分を見ていてくれる誰かの視線が、冷えた心を温めてくれる…そんなことに気づかされる。ほとんどの日常は日陰であり、粛々と続く。自分の視線も誰かを温めているといいなぁと思う。

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