2004|監督:イスマエル・フェル / モロッコ、フランス
イスラム教のメッカに向かうロードムービー。父の巡礼のために、息子が車を出すことに。
綺麗になりたい。デトックスして毒素を出したい。痩せたい。いつも安寧な心で柔らかく、優しい女性になりたい、と日々思っているのに、毎日訪れる理不尽とか迷惑とか不快感の嵐にストレスがたまりまくり、気がつくと甘いものをやけ食いし、なんと人生最大の体重を記録してしまった。どうして自分ばっかり…と思っている時は、人を許せず、感謝の気持ちは持てない。ああ、私はまだまだだ。成熟への道は、想像以上にけわしい_と、自分のことはさておき。 この映画のお父さんは、息子の気持ちを無視して巡礼に付き合わせた上、携帯は捨てるわ、彼女の写真は盗み見るわ、勝手極まりない嫌な大人の代表格みたいな人である。だが、ストーリーが進むにつれ、このお父さんがだんだん好きになっしまうのだ…。それは、お父さん自身が一番「自分はまだまだ至らない人間だ」と思い、自分に向かい合って行動を改めようとするからなのかもしれない。近年のテロ事件等でイスラムは怖いイメージになってしまっているが、映画で観るイスラム教は自分に厳しく、誠実な人々である。イスラム教自体を毛嫌いして差別すべきではないと思った。巡礼で魂を清めようとする人々の純粋さに胸打たれながら、その境地に達していない自分を振り返った。