ソハの地下水道

2011|監督:アグニシェカ・ホランド

「支援者」の心が強くなる理由とは。

つらすぎるホロコーストストーリーにはどうしようもなく胸が痛むのだが、この映画はユダヤ人の姿だけを描いているのではない。ユダヤ人を支援した(かくまった)ポーランド人の男がメインの映画だ。彼は序盤、ユダヤ人から金を巻き上げようとするクズ男で、不快感極まりない嫌な奴なんだけど、自分を必要としてくれる人たちがいることに気づいてから、だんだん人が変わっていく。支援者、という言葉の響きはカッコいいが、このポジションは相当強い意志がないと続けられないものだ。戦時中でもあり、自分の身すら危ない。だが、自身の命もかえりみず、家族を犠牲にしてまでユダヤ人を助けに行きたい気持ちが抑えられなくなる。その結果、全てを失いかけた男は崩れ落ちる。彼を見降ろし、「馬鹿ね…」とつぶやく妻が、最高にいい。こんな男を愛してしまった自分も含めた優しさ溢れる言葉。 やはり男は家族があってこそチカラがみなぎるのでは?と改めて感じた。全てを理解し協力してくれた家族とユダヤ人たちが、顔を合わせることになるラストには驚きで、涙が止まらなかった。まさかこの手の映画でハッピーエンドが見られるとは…

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