1992|監督:佐藤 真
新潟水俣病の人々の日常
水俣病にかかってしまった人々が、国に難病認定してもらうために訴訟を起こして戦う映画だと勝手に思っていたけれど、全然違った。ドキュメンタリーといえば、社会的弱者達の本音に迫り、実態を多くの人々に伝えようとするイメージがある。だが、同じ時間に同じものを見ても、人によって状況の捉え方が違うことがあるんだなぁ、と改めて思った。水俣病患者が映っていたことは確かだ。だが、そこには戦いとか、怒りとか、憎しみとか、恨みとかは全く感じられない。自分の仕事に誇りを持ち、誠実に生きる姿…誰に評価されるわけでもないのだろうけれど、自分らしく生きている老人たちが、とてもたくましく、清々しい。また、恥ずかしがり屋な可愛らしいおばあちゃんや、妻につっかかる微笑ましいおじいちゃんなど、心を許しあって暮らしている人々の幸せそうな様子が映っている。ゆったりとした時間。優しい人たち…。
難病の人が不幸だなんて、誰が決めた?…と私は自分を叱りたくなった。これも生の声、生の姿、実態である。佐藤監督が私の思い込みを取っ払って、ありのままの彼らを見せてくれたことが衝撃的だった。