2015|監督:ネメシュ・ラースロー
息子を正式に弔いたくて、死に物狂いでラビを探す男。
いつも通り事前に解説を読まずに観たので難しくなかったとは言わないけれど、そんなことはどうでもいいくらいにシンプルに伝えたいことを伝えていて、しかも、何となくでも観客に理解させてしまうところがすごい。本作は主人公のみにフォーカスを当てており、他の人は脇役。名前すらわからない。でも、観てれば敵、味方、妻、ラビ、とか何となくわかるので、展開が読めるのだ。重責を担っている主人公の俳優*1の演技も勿論スゴい。最初から最後まで、彼の表情の移り変わりには目が離せない。また、素人丸出しの言い方だけど、ハンディカメラみたいな映像が、地獄絵図的状況をより荒々しく感じさせているのも新鮮な驚き。カンヌでスゴい新人が現れたと話題になったそうだが、なるほど、こういうことだったのかと納得。個性的な監督だ。
囚われの状況でラビですら使命感を失い呆然としている中、サウルが毅然と「父親」でいることに感動する。父は強し。また、ラストの男の子を見かけた時のサウルの柔らかい微笑みが印象的だ。これほどの残虐な映画なのに、未来への夢を僅かながらも託しているような気がして。
*1:ルーリグ・ゲーザ