2015|監督:イシャーン・ナーイル
手の届かないものの眩しさは、忘れられない。
監督は写真家でもあり、とにかく映像がキレイ。喪失の切なさが散りばめられているせいもあるが、サラリとしたイメージの繊細な作品で、またインド映画の新しい境地を目の当たりにすることになった(女優の撮影現場として以外は、歌と踊りも取り入れられていない)。
失恋というものは本当にどうしようもないものなのだ、と改めて思う。時間や距離や他の異性や他のやるべきこととかで何とかなるものではない。辛いし苦しいし自暴自棄になりながら、過ぎ行く日々を生きるしかない。女性心理にはもちろん共感するけれど、この映画では特に男性心理がしっかり描かれていて、忘れがたい。旅先で知り合ったタフな女性もステキだったなぁ。海を忘れられない大地の話…心に沁みた。結局そこまで大事に思った人は忘れられないだろう。でも、忘れられない自分として生きていくしかないんじゃないかな。たぶん。そんな風に思う。
(東京国際映画祭 2015)