リンの夢

2014|監督:インゴ・ヘープ

お金を払ってSM嬢を自宅に呼ぶ女の子のお話。

私が思うに、リンはMではないと思うのだ。ただ「SM嬢」を職業にする女性が珍しく、彼女との出会いがすごく刺激的だったんだと思う。リンは人とのコミュニケーションが取れないわけではないが、自分の望むような人間関係をなかなか構築できない。シラけた日々を過ごしているように見えるが、実はなかなか好奇心旺盛な娘でもある。そんな彼女の満たされない心はSM嬢に救いを求めるようになっていく…。自他共に認めるクレイジーな彼女だが、実は「変わらないもの」や「続いていくもの」を切望している。現実は思うようにはいかないことばかりだけれど、彼女の見た夢が、彼女にとって幸せな夢なんだろうなぁと思うと、思わず涙ぐんでしまう。現実の世界にも彼女の安らぎはあったのだろうか。
真面目そうなお母さんにも、彼女は全く理解されていない。だからこそ「掃除のいいところはね、また汚れることなのよ」とお母さんにつぶやく姿が痛々しかった。自分を必要としてくれる人がいる実感はなくても、汚れがあれば清掃係の仕事はできる。…彼女のアイデンティティがまだ残っているように感じられ、少しだけほっとするラストだ。

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