1963|監督:サタジット・レイ
家計を助けるために、社会に出て奮闘する主婦のお話。
現代のインドもまだ女性がバリバリ働くイメージはないから、この映画が作られた頃は、正に時代の先端を行くテーマだったのではないだろうか。ジェンダー的要素もあり、社会で活躍できる自分の力を知って自信を持ったり、お金を稼ぐ充実感に微笑む主人公に共感できる部分もある。だが、私はこのストーリーが成功という形で締めくくられていないことなどから、映画を通してジェンダーを後押しするような意図は特になかったように思えた。むしろ、社会に出て生き生きと輝き出す妻の姿におののいたり、一家の主として家族を養ってきた自尊心をズタズタにされ、困りきった夫の表情が強く印象に残った。美しい妻を自分だけのものにしておきたい気持ちや、自分の言うことを全て受け入れ、聞き入れてくれる従順な妻でいて欲しい、という男の願望がストレートに表現されている。社会慣れしていなかった彼女にホッとするラストなんかも男性の本音のように思えてならない。