ウォンタクの天使

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遠方に住んでいる友人と 
新幹線改札で待ち合わせた時のこと。

改札の出口には大勢の人が待っていた。
おそらく、
家族とか兄弟とか友人とか恋人とかを
待っているのだろう。
そこにいるものが皆、
そわそわと新幹線出口とか時計を見ている。

そして待ち人が現れると
みるみると笑顔になり、
駆け寄ったり手を振ったりしている。
――いい光景だった。

私はといえば、 
髪型の変わった友人にまるで気づかず 
声をかけられてやっと気がついたのだけど。


会いたい人がいるというのは幸せなことだ。


でも、会いたくても会えないというのは 
本当につらい。

『ゴースト』以来、
この手の映画が増えたというけれど、
私は“死者との再会”というテーマには
めっぽう弱い。


映画ではないけれど、
特に強烈だったのは、
吉本ばななの『白河夜船』だった。

大事な人を失い、
少しづつ自分の中の明るさとか
やる気みたいなものを無くしてしまい、
心から疲れ果ててしまった女性が 
再生して行くために必要な
奇跡を経験をしたという…
夢のようなストーリー。

私はこれを読んだ後、立てなくなった。
突然の別れには 未練が残る。
きちんとお別れしたいと思うのは 
当然のことだ。


お父さんが
本当に天国に行ってしまってから 
ウォンタクはあの友人が
実は父親だったと気づく――。

父親が、自分や母を
大切に思っていてくれたこと、
見守っていてくれたことを知り、
心を入れ替えていくのである。


「人生なんて適当に生きりゃいいんだよ」


これほど深く温かい息子へのメッセージが
あるだろうか。

お父さん、いい人だったんだね、
お父さん、いい人だったんだねと 
私は心の中で何度も繰り返した…。