拍手する時に去れ

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高校時代にとても憧れていた人が
ミステリー小説ファンだった。
その影響を受けて、
私もかなりミステリーを乱読していた時期がある。

レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルド、ロバート・B・パーカー…。
ハードボイルド―――その、渋く抑制の効いた文体に、
若かりし頃、かなりハマっていた。


当時は女子高生だったくせに
「男のロマンが…」といった話をしては 
周囲の女友達を困惑させていた。

分厚い文庫本を絶えず持ち歩き、
夜はラジオでジャズに浸る。

このスタイルを尊重して
友達をやってくれていた人たちに感謝しなくてはと
今頃気付いた。(我ながら変わり者である)


この映画は、出だしから古めの
ミステリータッチの音楽がイカしている。
ハードボイルドにハマっていたあの頃が懐かしい。


内容の詳細は控えるが、
自分としては今の仕事とリンクしながら観た。


ひとつのことがらを実証するために、
ありとあらゆる検索をし、検証し、証拠を押さえる。
それには相当の忍耐を要求される。

疲れ果て、
「こんな感じでいいんじゃないの?」と思っていると 
他部署からするどい突込みが入り、考え直すハメに。

そうして苦労して作り上げた書類に
押印しようとしている頃、
実は実態が違っていたことが判明し、
最初からやり直し。

こうなると意地と執念だけで
真実を追い求めるようになるのだ。
(警察関係ではありません、念のため)
自分の場合は人の命がかかっているわけではないけれど…。


それでも、根気強く、
仕事に向かい合っていかなければならない立場は同じなので
頭の下がる思いである。
こんな風に自分の人生の何かとリンクさせながら
映画を観るのはとても楽しい。

齢を重ねるのも悪くないものだ。


男でもないのに
映画館を出るときの気分はすっかりハードボイルド。

帰りに寄ったそば屋で流れていた「処女航海」に
ふと耳を留めながら、
コレもミステリーに合うな、などと
キザなことを考え続けていた。