『麻薬王』映画感想 天国と地獄

ソン・ガンホの年齢を顧みない体当たり演技、大人の女性役が板についてきたぺ・ドゥナ…。確かな演技力を揃えた、さすがの韓国映画だ。音楽(選曲等)の素晴らしさにも感動した。”成り上がり”には運とルールがあるように、”その終わり"にもまた、そういう風になっている…と思わせるような流れがある。紙一重の弱さと強さ、往生際の悪いラスト…思わず鼻で笑ってしまう小気味良さ。「天使と悪魔のどっちがお前を裏切ると思う?」

2018|監督:ウ・ミンホ


『ローサは密告された』映画感想 したたかに生きる

泣く子も黙る、世間の冷たさ。夜は暗いのに、さらに闇へと向かうような映画だ。その筋の人間ではなく どこにでもいるありふれた家族の物語、というところに引き込まれる。頼りない父ちゃんに比べ、ローサ母ちゃんは迫力がある。いざとなると精神的に強いのは女なのかもしれない。ラストで肉団子をほおぼる表情が最高。苦しくたって、お腹は減る。食べなくちゃ。生きていかなくちゃ。…どんな手を使っても、生き抜くしたたかさよ。

2016|監督:ブリランテ・メンドーサ|再鑑賞
第69回 カンヌ国際映画祭(2016)


『イーダ』映画感想 ユダヤ人であることを知らずに育った少女

孤児として育った彼女に、実は叔母がいた。正反対のタイプではあるが 自らのルーツを知る旅に同行してくれた肉親を、一生忘れることはないだろう…。与えられた環境の中で、ぼんやりと誓願しようとしていた彼女の顔つきが、旅を終えて キリリと変わった。人間の変化をしっかりと認識できるのは、映画の醍醐味のひとつである。第三者の客観的な目線だからこそ、それがわかるのだと思う…。モノクロの、光と影の世界が驚くほど美しい。

2013|監督:ビム・ベンダース
ポーランド・デンマーク合作


『ベルリン・天使の詩』映画感想 人間に恋する天使

「ちっとも観客の方見て歌ってないじゃない。天国ばっかり見てる!」…ライヴハウスでの日本語にドキッ!ないものねだりは天使も人間も同じらしい。天使には憧れるが、コロンボの「こっちはいいぞぉ」にも共感。つらいことや 面倒くさいこと、イライラするのが本当に嫌で、何もかも投げ出したくなることが 人間界にはたくさんある。でも、きっとそれ以上に楽しいことや喜び、好きなことがあるような気がしてきて、涙。いい映画観た。

1987|監督:ビム・ベンダース
西ドイツ・アメリカ合作


『2人のローマ教皇』映画感想 意見の異なる2人

意見の異なる2人のモノモノしい空気がいたたまれず、特に序盤がツラみ…。けれども どうしてもお互いが必要で、それぞれ、相手の胸の内を探るようになっていく。展開が恐ろしく見事で、結末が観る前から想像できたのにも関わらず、それでも後半は幸せな涙が止まらなかった。俳優の素晴らしさも もちろんあると思うが、描き方の巧みさにやられてしまう作品である。ピザのシーンがめっちゃ好き!つられて 私もピザが食べたくなる…。


2019|監督:フェルナンド・メイレレス

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イギリス・イタリア・アルゼンチン・アメリカ合作

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